誰かに電話をしているのは分かってるんだけど、私はダルさと眩暈とで、気にかける事が出来なかった…

「すぐ来てくれるから、ちょっと待ってて」

「でも……」

「残り少ないし大丈夫だよ。今は前園さんの体調が優先」

「………すみません」

「奥で横になってようか。立てる?」

山内先生が差し出してくれた手を掴んで、立とうとしたんだけど、、椅子に舞い戻ってしまった。

その時




コンコンコン

誰かがやってきた。

「どうぞ」

「司さん、ヘルプって聞いたんですけど……」

「うん、ちょっと彼女を診てあげて欲しいんだ」

二人の会話をぼ〜っとする頭で聞いている。

「前園さん?」

呼ばれたので視線を上げると、日向先生と視線がぶつかった。

「日向、先生?」

「ちょっと体調不良みたいでさ。俺、まだ患者さん残ってるから、奥で診てあげてくれる?」

山内先生の言葉に一瞬息を飲んだ様に見えた日向先生。

申し訳ないな……

「…………分かりました。前園さん、立てる?」

日向先生の問いかけに、先ほど舞い戻ってしまった事を思い出して、小さく首を振った。

それを見た瞬間、日向先生は姫抱きで抱き上げた。

「や、おろして…」

あまりの突然さに下ろして欲しいと懇願する。

「少しだから。ここに居ても辛いだけでしょ?」

日向先生の言葉は最もで、暴れても仕方ないので日向先生に身体を預けることにした。

ドキドキが止まらないよ〜。

好きな人に抱き上げられて、正常な思考が出来ない……

だから日向先生がフッと息を吐いて優しい顔で見てくれていたなんて、全然知らなかった。