「日向、用意出来たから渡しておくよ」

そう言って、点滴薬を渡してくれた司さん。

「ありがとうございます」

「日向、前園さんに明日も無理しないように言ってあげて。しっかり治してからおいでって。婦長には話しておくから」

「ありがとうございます。助かります」

「頼むな」

「任せてください」

俺は前園さんをそっと抱き上げて、診察室を出た。

一応、人通りの少ない場所を選びながら歩く。

それにしても、まさかの展開でなんだか不思議な感覚だけど、気になる人の傍に居られるって嬉しい事だよな……




駐車場に着いて、後部座席に前園さんを寝かせてから運転席に座る。

美晴に一応連絡入れておこう。

『前園さんの体調が悪くて心配なので、連れて帰ります』

『由奈さん、体調悪いの?私今から病院で定期検診なんだけど、終わったらすぐに帰るね』



そうだ、今日は美晴の定期検診だった。

前園さんの事があって、俺の中でスッポリ美晴の事が抜けていた。


今までこんな事なかったのに……