「いつもはママとだからできないけど、やってみたかったんだー」

あっくんの言葉にお腹の大きな彩さんを思っての事だったんだろうと気づく。

「じゃぁ、ママとじゃ出来ない事やろう」

そう言って葵はあっくんを、抱っこしてそのまま肩車をした。

「わーっ!!たかいたかい!すごーい」

いつもよりテンションの上がったあっくんが嬉しそうで良かった。

「いつものかえりみちがたかーい」

こういう子どもらしい反応してくれるあっくんだから可愛いな。

その後も葵の肩車で家まで帰ったあっくんは終始ご機嫌だった。

マンションのエントランスに着くと、

「お帰りなさいませ」

と中原さんからの挨拶。

「ただいまー」

あっくんは肩車をされたまま。

「新様、肩車よろしいですね」

「はい。よろしいです」

と中原さんの言葉通りに返事しちゃうあっくんも可愛い。

「今日から暫く、新と兄と一緒に過ごします。彩さんが帰ってきたらまた伝えますね」

「かしこまりました」

それからエレベーターに乗り込み家に向かう。

「おじゃましまーす」

挨拶をするあっくん。

「はい、どうぞ」

トコトコ歩いてリビングに入ると

「ママは、びょういん?」

彩さんの姿が無い事を確認したあっくんからの質問。

もしかしたら、彩さんが家で待ってると思っていたのかも知れない。

「ママはね、赤ちゃんが、もうお腹から出たいよーって合図したみたいで、病院で赤ちゃんと頑張ってるよ」

葵が小児科医らしく、分かりやすく説明してくれた。

「パパは?」

「パパは、ママと赤ちゃんの事がんばれーって応援してるから、赤ちゃんが生まれるまでは帰ってこないよ」

「そっか……ぼくもママのこと、おうえんしたいな」

「後で電話出来るか聞いてみるね」

葵の言葉に嬉しそうに頷いたあっくん。