「谷口先生、流石ですね」

「え?」

「山内先生からの言葉だけで色々汲み取っちゃって凄いです」

野上さんが葵を褒める。

「え、いや、そんな事ないですよ。まだまだです」

葵は謙遜している。

「葵は昔から大人の中でみぃと接して来てたから、特に気持ちや考えを読み取るのはみぃと一緒ぐらい長けてるよ」

「司さんまで…そんな褒めないで下さい」

そう言いながらほっぺたをポリポリ掻いている。

葵照れてるな。

「まぁ、葵の努力もあるけどなー」

そう言いながら、葵の頭を撫でて髪をグシャグシャにしてやった。

「わーっ‼司さん止めてくださーぃ」

葵は俺から距離を取った。

「ハハ。今回葵がみぃの事良く見てくれていたお陰で入院免れたし、良かったよ。ありがとな」

「いえ。俺も気づけて良かったです。後はみぃが家で休んでくれていると良いんですけどね」

これが一番難関だったりする。

葵は良く分かってる。

「家には葵がいるし、1週間後に検診だから、無理は出来ないと思うんだけどね」

「そうですね。だけど今日、家に帰るまで正直心配です」

葵の本音がチラリ。

「何かあれば、1週間経たなくても連れてきてくれていいから」

「ありがとうございます。そうならない様にしたいですけどね」

葵の苦笑いが心境を物語っていた。



この日は、帰宅後の葵から連絡がなかったので、みぃはきちんと約束を守ってくれていた様で安心した。