「私の時は……いつだろうね」

そもそも結婚できるかも、わからない。

「もう、すぐそうやって後ろ向きになるんだから」

ママは私の肩を撫でてくれた。

「今日はおめでたい日だから、後ろ向きは駄目だね」

ニッコリ笑ってみせると、ママもニッコリ笑ってくれた。

「じゃ、パパと葵くんの元に戻りましょう」

そう言って、ゆっくり歩き出した。

「うん。あ、浅野さん色々ありがとうございました」

綺麗にしてくれた浅野さんにお礼を言う。

「いえ、楽しんできてくださいね」

「はい」

美容室を後にした。




親族控室の扉を開ける。

「おかえり、みぃ。可愛くして貰ったみたいだね」

「うん、沢山ドレスがあって迷っちゃった」

「そうかそうか。でも選べる方がいいだろ?」

「ふふ。そうだね。ありがとう」

パパと二人で笑い合う。



何だか視線を感じる……

その方向を見てみると葵がグレーのスリーピーススーツを着ていた。

「あ、葵。葵もいつもと違って格好いいね」

「っ!!み、みぃもとっても可愛いよ」

何だかぎこちない葵。

「ふふ。葵くん、みぃに見惚れちゃったんでしょー。おめかししたら女の子は変身しちゃうもんね」

「ちょっ…美緒さんっ!!」

何だか葵が焦ってる。

「ドレスが素敵だもんね。私もひと目見て気に入っちゃった」

そう言うと私に近づいてきた葵はホッとした様に私を抱きしめた。

「はぁ。いつものみぃだ」

「え?」

聞き返すと、私の肩に手を置いて、

「ドレスを着て凄く大人っぽくなっても、みぃはみぃだなって。今日は俺から離れちゃ駄目だからね。他の男の人がみぃを狙いに来るから」

「大丈夫。誰も私なんて相手にしないよ」