「ほらほら、泣かないの」

そう言ってハンカチを渡してくれた桜。

「さ、くら………ど、して?お仕事は?」

「大事な親友の退院だもの。お祝いしたいじゃない。お休みもらっちゃった」

桜のあっけらかんとした態度に目を見開いたみぃ。

「桜らしいよな」

そう言って桜の肩を抱いたのは司さん。

「そう言う司だってそうでしょ?」

「ま、そうだな。大事な彼女の親友の退院祝いだもんな」

「それに、元気なみぃと色々話したかったしね」

そう言った桜の言葉には、色々含まれている気がした。

ちらりと司さんを見ると嬉しそうな顔だった。

「取り敢えずみぃ、コートと荷物置いておいで」

俺がそう言うとにっこり笑って頷いた。

みぃが戻って来たところで、退院祝いが始まった。




いつも通り、かな兄とひな兄の料理は美味しくて、みんなの箸は止まらなかった。

「みぃー。たいいんおめでとう」

と新の声が響く。

「あっくん、ありがとう。今日はパパとお出掛けで楽しい?」

そう、この場所に彩さんがいない。

「うん、パパとおでかけたのしいよー。みぃにもあえたしね」

「そか、私もあっくんに会えて嬉しい。元気にしてた?」

「うん、ぼくはげんきだよ。でもね、ママはしんどいんだって」

「え?そうなの?」

「うん。でもきょうはね、みぃにあいたいってママいってたんだけど、パパがだめだっていったの」