「とりあえず、落ち着こう。美晴、深呼吸だよ」

ハァ、スー、ハァ、ハー、ハァ、スー、ハァ、ハー……

俺の声が聞こえてきたのか、今度はゆっくり深呼吸ができた。

「そう、上手だよ。大丈夫、ゆっくりだよ」


暫く深呼吸を続けると落ち着いてきた。

「落ち着いた?」

俺の言葉に小さくコクンと頷いた美晴。


「ひな兄、ごめんね……」

「みぃが謝ることなんてないよ。今はしっかり治そうな」

「葵に負担掛けない様に、私も頑張って治すね‼︎」

美晴の勢いは、今回は早く治したい事が手に取るように分かった。

「無理しない程度にね」

「はぁい」






その日、家に帰ると葵はベッドに居なくて……

湊に送迎をお願いしていたから、多分、葵の実家に帰ったんだろう事が予想出来た。

俺は葵の状態も気になったので、葵の実家を訪ねた。


ピンポーン……

「はい」

「あの……日向です。夜分にすいません」

「ちょっと待ってね」

しばらくすると玄関のドアが開いた。

「日向くん、わざわざ来てくれたの?」

そう言って、春子さんが出迎えてくれた。

「葵の体調気になって……休憩中も美晴の側に居てくれたからこうなったから……」

「ふふ、気にしなくていいのに。自分の体調管理も医者の仕事の一つでしょう?」

春子さんは悪戯に微笑んだ。

「葵は、体を張って覚えてもらったらいいのよ。しっかりと学ばないとね」

結構スパルタな春子さんだった。