「そっかー。お姉ちゃんのお誕生日なんだね。だけどね、先生は舞ちゃんに無理をして欲しくないから、今日のお出かけは中止にしようと思うんだ。でも、舞ちゃんのお母さんと少しお話して、お姉ちゃんのお誕生日一緒に出来るように考えるから……だから、泣かないで?」

澤井先生の話を聞いている舞ちゃんの目からはポロポロ涙が零れ出している。

「せんせ……まいが……わるいからだめなの?」

「違うよ。舞ちゃんは何も悪くないよ。病気のバイ菌が悪いんだ。誰も悪くないよ」

澤井先生は舞ちゃんと視線を合わせて会話している。

子どもの視線になってくれる先生は、基本優しいよね。


「おねえちゃんのおいわい、まいもできる?」

「もちろん。その為にも舞ちゃんは今日は無理しちゃだめ。舞ちゃんが無理すると、みんな悲しくなっちゃうからね?」

澤井先生の言葉を聞いて安心したのか、体の力を抜いた舞ちゃん。

やっぱり無理してたんだ……

「桃谷さん、点滴してあげてね。舞ちゃん、先生は今からお母さんとお話するから、ゆっくり休んでね」

小さく頷いた舞ちゃんを見て、澤井先生は病室を出ていった。








数時間後…………


特別室で舞ちゃんのお姉ちゃんのお誕生日会が開かれた。

舞ちゃんは点滴のお陰か少し元気を取り戻して、ベッドから起き上がれるようになってニコニコ笑顔だった。

「「「お誕生日、おめでとうー」」」

病室には楽しい時間が流れていた。

澤井先生は舞ちゃんに、場所は違っても、大切な人をお祝いすることが出来ると伝えたかったんだと思う。