「少しずつでいいから、口から入れような」

「はぁい」

心配していた吐き気は襲って来なかったようで、みぃも俺も司さん安心した。

ただ、一口飲むだけで、相当な体力を使ったみたいで、既にぐったりしている。

俺は背中に挟んだ枕を頭に戻して、少しだけベッドを下げた。 


「気分が悪くなったら、ここに出していいからね」

そう言って、受け皿を枕元に置いた。


みぃはにっこり笑って目を閉じた。


「無茶させましたか?」

俺は心配になって司さんに聞いた。

「ん?いや、させてないよ。大丈夫。みぃも葵と一緒に頑張れたから良かったんじゃないかな」

そうだと嬉しいな。


「俺、そろそろ仕事行かないとなので行きます。みぃに何かあったらまた教えてください」

「りょーかい。頑張って、葵センセ」

司さんにからかわれながらも、先生と呼ばれる事に少しずつ抵抗がなくなってきている自分がいた。

俺は、今研修に行っている小児科の医局に向かった。



「おはよーございまーす」

ナースステーションの前を通ったので、挨拶をする。

「あ、あおじゃなくて、谷口先生おはようございます」

俺の挨拶に答えてくれたのは、桜だった。

俺と桜が幼なじみなのは、小児科の先生や看護師さんみんなに知られてるけど、挨拶や患者さんの前ではお互い名字で読んでいる。

なぜ、そうなっているかというと、桜が小児科の看護師だからだ。

それに、みぃはずっと小児科の患者だったわけで。

俺や桜のことを小さい頃から知っている先生や看護師さんがたくさんいたんだ。