「ん」

「なに?」


近道と信じ込んで
いつも通って帰る
あぜ道で
グーした左手を
あたしに突き出した


「なにぃ?」

「ええから、やるって」


半ば無理矢理
手のひらにねじ込まれた
それは
あたしが好きと言った
脇役キャラクターの
キーホルダーだった


「ええん?」

「ええ」

「だって大事やっていいよったやん」

「ええねん!やる」


前にランドセルに
付いているのを見つけて
「ええな」って言った時
「大事やからやらん」
って言われたことがあった


「お前好きなんやろ」

「うん、好き」

「やから、やる」


手のひらに乗っかった
キラキラ光るキーホルダーを
じっと見てから
顔をあげると
耳を真っ赤にした彼が
どんどん歩いていく
後姿が見えた


今となっては
かわいらしい
小学生のすること


でも


その時あたしは
ほんとにほんとに
うれしかったんだ


それが
あたしの
誕生日の出来事だったから