だんだん暖かくなって
春が近づいてきても
章弘への風当たりは
冷たさを増していた


前よりも学校には
こなくなって
みんなが
章弘のことを
忘れているように思えた

たまに
その名前を耳にすれば
嫌なものを見るような目で
その名前の響きの
跡を追っていた


知らないうちに
知らないところで
章弘はどんどん
悪者になっていた


また補導された


そんな声は
あたしの耳を
右から左へと
通り抜けていった

あたしが信じているのは
ただ一つ

この目に映る
あたしの知っている章弘

他のものなんて
信じない

そうじゃなきゃ
章弘がかわいそうだよ

また
ひとりぼっちだよ…


会えなくても
寂しくても
あの日のぬくもりが
あたしをあたためていた


自由ばかりを求める
思春期に
満ち足りたものなんて
何もなくて

手に入れたものは
今となっては
砂みたいに
軽くてこぼれてしまうような
はかなく
あさはかなものばかりだった


そんな中で
今でもこぼれずに
この胸にとどまっている
章弘への想いは

なんてキレイで
なんて悲しいものなのだろうか