章弘が話す

きっと誰も知らないような
陽気でかわいい章弘

背と髪型以外は
昔と何も変わらない

いや
声は少し
低くなっている気がするけど


タバコを吸って
バイクで暴走していたって
別にいいじゃない

章弘は
章弘なんだから


「なぁー、聞いとる?」

「聞いてますー」

章弘がちっちゃい子みたいに
あたしに聞く

「犬のフンがあるから、
気をつけるようにー」

「わざわざどうもありがとうー」

これじゃまるで
小学生の頃みたいだ

くすくす笑うと
涙はもう出なかった


会いたくて
会いたくて

かと思えば
こうして突然
不意打ちみたいに出会って

内容の薄い話でも
バカみたいに楽しくて
しょうもない言葉が
死ぬほどうれしいと思える

そんなのを
大恋愛ってゆうんだと
この時は知らなかった


この時間が
ずっとずっと
続けばいいのに…


あたしは
章弘の左手に
そっと触れて
小指の先を
きゅっと握った