当たり前だけど
章弘は振り返った

眉間にしわを寄せて
鋭い目をした
怖い顔だった


「ごめん、当たった」


あたしは
びっくりして
わけの分からない
言葉で謝った


章弘は
あたしの顔を見るなり
首をかしげて
おかしな顔をした


「お前、おったんか」

「うん」

「声かけろよな」

「うん」

「なんやねん?どないしたん?」


久しぶりに聞いた
その声に
さっきガマンした涙が
また押し寄せて
黒目の上で
波打っていた


「何ぃ?大丈夫か?」

「大丈夫やから、前歩いて」


そう言って背中を押して
章弘を前に向かせた

誰も制御できなくなった
あたしの体は
壊れたように
感情がもれ出していた


「なぁ、お前なんか変やって」

「今さら何ゆっとるんよ」

「まぁ、そうやけど」

「そこはそんなことないで、
とかゆってよな」

「どないやねん」


30センチの定規が
一本と半分あれば
ちょうどなくらいの距離

さらに
その一歩左側を
あたしは歩いた

章弘の声を
聞きながら