移動教室の授業が
始まってすぐ
教科書を忘れたことに
気づいたあたしは
許可をもらって
一人
自分の教室へ戻った

誰もいない
静かな教室の机から
教科書を見つけた時
どこかから
ペタンペタンと
続く小さな音がした


振り向いた瞬間


ドア越しに
廊下を歩く
章弘が見えた


はっとして
思わずドアまで
走って

そしてそこで
足を止めた


何をするつもり?


あたしがあたしに
問いかける


何にもできんよ
何にも…


そっと廊下へ出て
章弘の行った先を
惜しげに見ていた


章弘


やっぱり
その姿を見ると
追わずにはいられない

求めずには
いられない


足は
頭で考えるより先に
章弘の後を
追っていた


授業中


許可を得て
廊下にいるあたしは
許可を得ずに
廊下を歩いている
章弘を
追った