少しずつ
近くなっていく距離に
心臓は
急に回転数を上げ
あたしを
挙動不審にさせた

一歩
一歩

距離が縮まる

ドキドキしている自分が
悲しくて
落ち着くように
言い聞かせた

別に
あたしに向かって
きとるんじゃない

もう
あの頃の二人じゃない

章弘は
きっと忘れたに
違いない

あの日
あたしを嫌いになったに
違いない


落ち着くように
言い聞かせたはずなのに
自分で自分を
傷つけていた


終わった恋


でも
ちっとも消えたりしない

この胸に
深く深く刻まれて
どんなに上塗りしても
平らにはならない

章弘を見かけるたびに
古傷が痛むような
錯覚を
いつも感じていた


見つめ続けた
視線が
章弘の視線に
捕まる


目が合ってしまった


章弘


声には出せない
呼ぶことのできない
その名前を
あたしは
心の中で
呼んでいた