今なら分かる

どうして
イラついたのか

どうして
寂しかったのか

それは全部
好きだったから

章弘のことが
好きだったからだ

幼いながらに感じた
嫉妬や焦燥感
そして
独占欲

今ならちゃんと
分かる


だけど
あの頃のあたしは
分からなかった

分かれなかった

章弘は
もっと前に
この気持ちを
感じていたんだ

あたしと森君を
蹴った
あの日に

けど
章弘は許してくれた

その気持ちを越えて
許してくれた

そして
離れずに戻ってくれた

きっと
あの「おはよう」は
ずいぶん勇気のいった
「おはよう」だったんだ

なのに

あたしは
許せなかった
勇気もなかった

その日を境に
もう
章弘とあたしが
一緒に帰ることはなかった