「立てるんか?」

「大丈夫」


章弘の手が
あたしの手を
しっかり握っていた

秋が迫って
陽が急いで沈もうとする
そんな肌寒い
日だった

だから
あの手を
あたたかいと思ったのかな

それとも
不器用な優しさに
あたたかさを
感じたのかなぁ

繋がれた手は
離れることなく
まだ幼い
二つの小さな手が
ひとつになろうとしていた


「家こいよ、消毒するから」

「ええわ、大丈夫!」

「見てみぃな、大丈夫ちゃうやろ!」


確かに
あたしの足には
小さな赤い滝が
できようとしていた

仕方がないので
寄ることにした

あたしの家への
帰り道に
章弘の大きな家はある


「入って」

「おじゃまします」

「誰もおらんからええって」

靴をそろえるあたしに
章弘は言った


そうだった
章弘もかぎっ子だ


広くておしゃれな
モノトーンの家

だけど

章弘が一人で
いるには
寂しすぎる
所に思えた