恋する姫



『ごめんなさい。あなたとは誓えません。』

大きな家に響く小さな声。

聖羅と話をしているのは、もちろん松 拓李。

『僕に言って無理です』

『でも、あなたにはわかってほしい』

『・・・晴貴様ですか?』

『はい』

まっすぐと答えていた。

ちょっと嬉しいかも。

『わかりました。僕からもお父様に言っておきます。“僕との結婚は中止”と』

『え?ありがとうございます。本当にすみません』

『いや。いいんですよ。僕にも、愛する人がいるんでね』

『そうですか。お幸せに』

『嬢様こそ、晴貴様とお幸せに。ついでに、晴貴様と結婚できるようにお父様に言っておきます』

さっきまで、婚約者どうしだった二人がお互いの幸せを祈っている。

『結婚なんて・・・』

『クスッ。だってそう言ってあげると喜びそうな人が後ろにいるんですもん』

松さんと目があった。

ここにいるの知ってるの?

「あっ晴貴!!」

聖羅とも目があった。

「では」

松さんは去っていき、聖羅は駆けてきた。

「晴貴っ!」

聖羅がオレの懐に飛び込んできた。

「松さんね・・・優しい人だった」

「うん」

オレも思った。

「晴貴、ずっと一緒にいて」

「うん」

それは、プロポーズととっいいの?