ただ、愛してる。

そう自覚すると、カッと顔が熱くなるのが分かった。

恥ずかしい。
こんな気持ちは初めてで、どうしたらいいのか分からなくなる。


ふぅ…
と深呼吸をして、私も会議室から出ようとしたその時、


「健ってば、いつなら予定があくの?」


透き通った高い声が扉越しから聞こえて、すぐにこの声は女の人だと理解した。

思わず足を止めて、盗み聞きは悪いと思いながらも耳をすます。


健って…、中津さんの名前、だよね?


「…悪い、今は異動してきたばかりで忙しいんだ」


……やっぱり中津さんだ。

声で会話の相手は中津さんだと確信して、いつの間にか耳に神経を集中させるぐらい聞き入ってしまった。


「そう。なら仕方ないわよね。でも身体は気をつけてね!」

「ああ」

「あ、ネクタイが歪んでる」


会話からきっと女の人は、中津さんのネクタイを直しているんだろう。

簡単に想像出来てしまって、そしてモヤッと霧が掛かったかのように心が曇ってく。

何より1番悔しいのは、さっきまで一緒に居たのに、私はネクタイが歪んでることすら気づかなかった…