ただ、愛してる。

パタンと扉が閉まると流れる沈黙。

私は不安にかられながら、中津さんを見ると、

「腕、」

と声が聞こえてきた。


「もう腕は大丈夫なのか?」


振り返って私を見る中津さんに、思わず顔を下に向けた。


「…覚えて、たんですか」

「そりゃ、初対面であんないい逃げされたら忘れないだろ」


そっか、覚えてたんだ。

するとなぜか私の心が軽くなって、フワリと暖かくなる。


「じゃぁ、どうして何も言ってくれなかったんですか?」

「声なんてかけれる訳ないだろが。あんな怒らせて、なんて言えばいいんだよ」

「え、中津さん…私が怒ってると…?」

「怒ってただろ」

「あ、いや、あれはただの逆ギレというか…謝らないといけないのは私で…でも、中津さん何も言ってこないから、なかなか声をかけれなくて、私のことなんて忘…え、」


いつの間にか中津さんは私の目の前に居て。

そっと私の腕を触れていた。


「赤みは引いたようだな」


私の腕をじっと見る中津さんの姿に、私の心臓はドキッと跳ねる。

その光景が、時間が止まったかのように見えた。


「宮原?…おい、宮原」

「え?あ、当たり前ですよ!もう1週間経つんですから」

「それもそうか。あの時は俺も悪かった。つい叱る癖が染み付いてしまって…」


あ…、そう言えばこっちに来る前は営業部で新人教育してたんだっけ。

それでもって、社長候補…