昼下がりのある日。

私は街中でちょっと面倒くさい…いや、かなり面倒くさい男を相手していた。


「待てって!」

「ちょ、やだ!離して!」


捕まれた腕をぶんぶん振っても、離してくれる様子はなくて。
むしろさらにグッと力を込められる。


「そんなの納得いく訳ねぇだろ」

「だからそういうのが、面倒くさいのよ!」

「はぁ?お前、調子乗ってんじゃねぇよ」


男の手が宙を舞って、

殴られる…!

そう思いながら目を瞑った。


あ…れ?痛くない…

目を瞑って数秒。
恐らく殴られるだろうと予想した頬に痛みは感じなくて、そっと瞼を開けた。


「…っ」

「え?」


そこには宙を舞っていたはずの男の手が誰かに止められていて、男は顔を歪めていた。


「女に手なんて挙げるな」

「っ、何だよお前!つか、離せ」

「…行くぞ」

「え、あ、」


一瞬の出来事で、何が何だか分からないまま、私は謎の男に手を引かれてその場から離れた。

誰?助けて、くれた…?


「痛っ」

「え?」


私の声にパッと解放された私の腕。

見ると腕はほのかに赤くなっていて、さっきアイツに握られたからだと理解した。


「悪い、大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です。助けて下さってありがとうございました」

「…大きなお世話だと思うけど、さっきの彼氏?もっと男みる目養った方がいい」

「……え、」

「その様子だと同じようなこと、何度もあったんじゃないか?学習能力ってものを……悪い、初対面なのに言い過ぎた」


するとその人は私から離れて、どこかに行ってしまった。