景色を眺めて数分経った程度。
背後から足音がする。どんどん私の所まで近付いて来ている。

『ここらへんは人をさらう奴らが居る』ラウリの言葉が頭をよぎる。これはどっちだろう。

「貴女様が蒼華さんですね」

突拍子も無く少年の声が背後から掛かる。私は驚き振り向く。
そこには私より身長の低い少年が立っていた。

大正の男子学生が着る制服によく似た、紺色の衣装に身を包み、革靴の代わりにブーツを履いている。学生帽は被っていない。

中学生位に見える顔は狐を連想させる細い目。濃紺の短髪は物凄い癖があるが、それが子供らしさを掻き立てている。