「……よし」

ラウリが蒼華を寝かせる。彼女の表情は全く変わっていない。
蒼華が手に何かを握っているのに気付く。幸い、大した力は入っていない為、あっさりと入手出来た。

蒼華が来夢に渡された紙切れを見て、ラウリは全てを把握した。そして、下らない、と言わんばかりの表情でそれを蝋燭の炎に放り込む。
赤い炎が一瞬、紫色に変わる。ラウリはそれを見て嗤う。

「俺を騙そうなんぞ永遠に出来る訳ない」

後は……情けで夢の内容だけにしておこう。名前だけは消さないでおいてやる。

ラウリは蒼華の額にキスをした。

「来夢……二度目は無いからな」

ラウリの両目が妖しく輝いた。

「蒼華、お前は何も知らなくて良い。だから、全てを渡してくれ。……いつか、俺もお前に全てをやる」

まだ、真実を知るのは待ってくれないか? あんな奴からではなく、俺の口から話そう。

美しき愚者は眠りに落ちている無垢な少女に誓いの口付けをする。

彼はこの少女が自分のものだと伝える証を付けるかの様に、深い、深い口付けを落とした。