「あそこは付喪神の住処だ」

何の前触れも無くあの家について話し始めた。

「2体居るのは分かったけどそれ以外は?」

でも聞かなければ行けない。ラウリも私も白い息を吐きながら下山している。下には瓦屋根の建物が密集している。ラウリ曰く、あそこで行商を行い、夕方になったら家で商売をすると言う。

「店内を見ただろう? あそこの布は全て付喪神が宿っている。お前の着物もその一つだ。だが、それは少し仕様が違う」

「一体どんな?」

「その柄にある妖の力……制限無しで魔法が使える」

あまりにも非現実的な発言に耳を疑った。そして、ラウリを凝視する。
発言した当人は何故驚いた顔をする? と言いたげに怪訝な表情だが、驚かずには居られないのが普通だ。

「ここは『妖』の世界だおかしい事ではない。お前の着物は二つ魔法が使える。それが何なのかは自分で確かめろ」

「どんなのか分からないの?」

「逆に訊く。お前は他人の本性が分かるか?」

「そんなの、分かる訳無いよ」

ラウリも含めて……。

「そう言う事だ」

言葉では分からないけど理解は出来た。少なくともこの着物には助けられそうだ。

「付喪神は生きている。人を選ぶ。特にお前の奴は二、三倍人を選ぶ」

それって……。
「相当幸運だったって事?」

その問いかけてに少し違うな、と答えた。

「物の気分次第。幸運なんかではない。偶然だ」

よく分からない。まるで哲学者を相手している様に思えてきた。
私にとってそれは幸運で他人から見たら偶然の産物でしかない。
不思議。

「もしかして、このどてらも? ラウリの羽織も?」

「そんな訳あるか。これは俺が織った布を手縫いで作った物だ」

「!?」

冗談のつもりだったのに衝撃的な事実が分かった。考えてみれば店の片隅に機織り機があったのを思い出した。
あれ、ラウリが使っていたんだ。


物凄い趣味を持っている。女性か、と突っ込みを入れたい位。
でも、体型さえどうにかすれば長身の美女になる事間違い無しだろう。

「俺が売っているのは使ってくれる人を求める付喪神、自作の雑貨、飾り物だ」

後々、お前にも作り方を教えると言われ、出来るか心配だけどやるしかない、ね。