「日が上りきった。行商に行くか」

おもむろに立ち上がり、いつの間にかあった藍色の羽織を取り出し着て同色の風呂敷を持つ。
私を一瞥して寒いからこれを着ろと浅葱色の『どてら』を渡された。逆にラウリは寒くないのかと思ったけど別段平気そうに見える。

迷い家は消えていた。ラウリは消えた訳ではなくて、日が上りきると認識できなくなると教えてくれた。

布の波を抜けると白い雪下駄があった。これも付喪神の力なのかもしれない。

「行くぞ」

紫色の暖簾を手に掛け、私の方に振り向き、小さい笑みをこぼしながら優しく語り掛けてきた。

「うん」

行ってきます。