嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「じゃあ……あっ……」


家の前で別れる時、私はある事を思い出してキミを見つめた。
鞄から1冊のノートを取り出してキミへと渡す。


「これは……?」

「現代文と古典の纏めノート。
先生の問題の癖とか、私なりに分析してみたから良かったら使って?」


正輝は他の教科は文句なしに完璧なのに。
現代文と古典は少し苦手みたいだ。
そんな彼の役に立ちたくて。
私に出来る事はしたかった。
まあ、参考になるかは分からないけれど。


「……勉強で忙しいのに……こんな事しなくても……」

「キミの真似っ子だよ」


にっと笑う。
これは本物の笑顔だ。

キミには偽りじゃない。
心からの笑顔を浮かべられるから。


「本当に馬鹿だねアンタ」


口は悪いのに、顔は笑顔で。
天邪鬼なキミに呆れながらも。
この距離感が心地が良いんだ。


「私が馬鹿だったら正輝も馬鹿だね」

「うるさい」


キミの笑顔が眩しくて。
目を逸らしそうになるけれど。
キミの顔を見続けた。
綺麗な心と触れ合いたくて。
あわよくば、私自身も綺麗になりたくて。


「ふふっ……」


私の心は、いつか晴れ渡る日が来るのだろうか。


「……はい、俺からも。
現代文と古典はないけどそれ以外は纏めてあるから」


キミから渡されたブルーのノート。
それを受けとれば照れた様に笑われる。


「なんか、恥ずかしい。
お互いに助け合うって」

「確かに。
誰かの為にノートを作るなんて考えてもいなかったよ!」

「俺だって。初めて」


キミが笑えば私も笑う。
私が笑えばキミも笑う。

2人で笑いながらお互いのノートを握りしめた。