嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「……」


自分の部屋に籠って勉強をする為に机に向かっていたけれど。
シャーペンを握りしめたまま止まっていた。

さっきのお兄ちゃんの顔が頭から離れないんだ。
忘れようとしても、何度も浮かんできて。
胸にザワメキを与えて。
頭の中を真っ白にさせる。


「……駄目だ……」


気分転換でもしようと立ち上がり、カーテンを開ける。
目に映るのはクリーム色の壁。
正輝の家だ。
そして、同じくらいの高さに窓があって。
その奥にはキミの部屋がある。

何度か、と、言うより、よく窓を開けて喋っているんだ。
家にいてもキミと会えるなんて凄く幸せで。
私の心はいつだって温かかった。
キミと出逢ってからは。

どんなに醜い声が他人から聞こえても。
キミが傍にいてくれるから私は笑っていられた。


「……正輝っ……」


キミの名前を呼んでも。
ピシャリと閉まっている窓に遮られて届かない。

無性にキミの顔が見たくて。
カーテン越しに伝わる光を呆然と眺めていた。


「何してるのサボり魔」


いきなり開いたカーテン。
呆れ顔のキミ。

突然の事で言葉すら出なかった。

驚きながらも窓を開ければ深いタメ息を吐かれる。
でも、そんな事より。
正輝の顔を見れた事が嬉しくて。
私の胸の中はスーッと軽くなっていく。


「勉強しないの?って言うかノートちゃんと見た?」

「……まだ」

「……早く見なよ」

「……うん見る」


さっきまで色々と考え込んでいたのに。
それが嘘の様になくなっていく。

キミにどれだけ支えられているかが改めて思い知らされる。