「なに固まってるの?」


ケラケラと笑いだす正輝を呆然と見る。
正輝と近い距離にいるのは珍しい事ではないのに。
凄く恥ずかしくて、胸の中が熱いんだ。


「ばーか……!!」


さっきまで笑っていたはずのキミは何故か慌てた様に顔を逸らしていた。
何事かと思い横顔を盗み見れば、耳までが真っ赤に染まっていたんだ。


「あっ……」

「な、なに」

「……別に~?」


意識をしているのは私だけじゃないんだ。
そう思うと胸の中が更に熱くなっていく。

今度は私が笑う番だった。
クスクスと笑っていれば不機嫌そうに顔を歪めるキミ。
でも、その中には優しさがあって。
気が付けば2人で笑っていた。


「ねえ」

「ん?」


散々、笑った後、キミは何かを思い出した様に私を見つめた。
何だろう?そう思っていればキミの手が私の手から離れていく。
それが寂しくて、鈍い痛みが胸の中を支配した。
苦しくて、言葉さえも出なくて。
固まる事しか出来なかった。


「連絡先を教えてよ」

「え?」

「なに?嫌なの?」


拗ねた様に唇を尖らすキミ。
その顔が可愛くて、胸の痛みなんかどこかに消えてしまう。


「嫌な訳ないじゃん!」


鞄の中からスマホを取り出すと、これでもかってくらいに目を細めて笑った。