自分の気持ちを全て吐き出せば体が軽くなった様に楽になった。
今まではただ逃げているだけで。
この気持ちと向き合った事なんてなかったから。


「……」


正輝は黙り込んだままだった。
でも、繋いでいる手を離そうとはしない。
それどころか痛いくらいに握られる。
私も負けじと握り返せば、お互いの体温が交じり合って熱くなる。
正輝との間に流れる沈黙は嫌ではない。
だけど少し恥ずかしくなって、繋いでいた手をキミの体に軽くぶつける。


「何か言ってよ」


熱くなった顔。
それでも逸らす事はなくキミを見つめた。


「ばーか」

「は!?」


出てきた言葉は想定外で。
思わず間抜けな声を披露していた。
でも、正輝はそんな事を気にする事なく私を見つめると呆れた様にタメ息を吐いた。


「そんなの俺も同じだし」

「え?」

「俺だってアンタに出逢えて良かったって思ってる。
和葉は他の奴とは違う。
嘘つきだらけの人間じゃない。
アンタといるとホッとするんだ」

「……正輝」

「だから自分だけだと思わないでよ」


首を傾げていれば、キミは腰を落として私の顔を覗いたんだ。
あまりにも近い距離でドクンと胸が高鳴った。


「助けられてるのはアンタだけじゃないって事」

「……あっ……」


コツンと頭を小突かれる。
それだけなのに煩いくらいに心臓が揺れ動いた。