裸足になって海へと駆けた。

バシャバシャと水を掻き分けながら歩く。

辺りに飛び散る水しぶきが太陽の光でキラキラと輝いていた。


「もう最高……」


噛みしめる様な声が体から抜けていく。
こんなに楽しい場所はない。
そう断言できるくらいにココは素敵な所だ。

照り付ける様な日差しが汗を滲ませる。
髪の毛が少し湿っている様な気がするけれど、どうだって良かった。

年頃の女の子たちは、化粧とか服装とか。
オシャレに気を遣うかもしれないけど。

私はそんなものに興味はない。
だってどんなに外見を取り繕ったって。
中身が汚れていたら意味がないもん。

そういう人を沢山見てきたからこそ。
私は外見より中身を大切にしたいって思うんだ。


「なに幸せそうな顔をしてるの?」

「え?」


少し低い声。
でも嫌じゃないその声は、胸に優しく広がっていく。
反射的に振り向けばそこには、もうすっかりと見慣れた顔があった。


「正輝!?」


ポケットに両手を突っ込みながら砂浜に立っている茶髪の男の名前を呼ぶ。
ゆっくりと近付いてくる正輝。
波打ち際に立って水の中にいる私を見つめていた。


「何してんの?」

「何って……遊んでる?」


疑問形で答えれば呆れた様に笑うキミ。
でもすぐに柔らかい笑顔になって手招きをする。


「今日は入ってこないんだ」


ワザとらしく口角を上げて正輝の顔を見上げる。

すると、眉間にシワが寄ってくる。
多分、あの時の事を思い出しているんだろう。
正輝が私が自殺をすると勘違いをして海に入ってきた時の事だ。