嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「和翔、お前もいい年なんだから結婚とか考えていないのか?」


偽りの夫婦を演じていたお父さんが、今度はお兄ちゃんに話し掛ける。
今度は偽りの親子関係を演じる訳?
冷めた心で、他人事の様にボーッとその光景を見ていた。


「別に今は考えていないけど」

「彼女は?(さっさと結婚でもして自立しろよ)」

「いや、いない」


お兄ちゃんは私の隣だから目が合わないし、心の声は聞こえないけれど。
お父さんの心の声は丸聞こえだ。
結婚の事を心配するのは親として普通の事なんだろうけど。
何で家から追い出そうとするのかが分からない。
私だってお兄ちゃんの幸せを願っているけど、今、お兄ちゃんが居なくなったら……。
不安に想っていればコツンと足を蹴られた。


「……」


驚いて横を見ればお兄ちゃんが優しく目を細めて私を見ていた。


「ちゃんと食えよ(……ココにいるから安心しろ)」


少し後に聞こえてくるお兄ちゃんの心の声。
お兄ちゃんは私が心の声が聞こえる事を知っているから、こうやって口に出さなくても会話が出来るんだ。
会話と言っても、私の想いは口に出さないと伝わらないんだけど。


「……うん」


お兄ちゃんの顔を見つめて、同じ様に目を細める。

いつだってお兄ちゃんは優しくて。
そんなお兄ちゃんが大好きだった。
私の自慢の兄で、自慢の家族だ。


「和葉」

「お父さん?」


急にお兄ちゃんから私に視線を変えるお父さん。
何かと思い首を傾げればお父さんは少し微笑みながら口を開いた。


「この前のテスト、結果が良かっただろ」

「う、うん」

「次は学年順位を10番以内を目指しなさい」

「……え……」


この前の順位は486人中の25位だった。
一気に15人抜きはキツイよ。
そう思っていればお父さんと視線が交じり合う。