キョトンと目を丸める正輝。
吊り上った目がこれでもかってくらいに開かれていて。
思わず私まで目を見開いてしまう。
何でそんなに驚いているの?
考えても分からずキミを見つめていれば、ふいに目が合ってしまった。


「(本当に……変わった子だな……)」


頭に響く声。
その言葉は気にくわないけれど、その声は凄く優しく感じた。
黙ったまま口元を緩ませれば、キミの大きく開かれていた目がゆっくりと細まった。


「和葉って本当に変わってるね」


頭の中に響いた声と同様に優しい声。
フワリと浮かんだ笑顔を見ながら私は小さくタメ息を吐いた。

怒っている訳じゃない。
呆れている訳じゃない。


「変わってるのは正輝の方だよ」


ただ嬉しいんだ。
言葉では表せられないほど。

キミみたいにココまで心が綺麗な人なんて見た事なくて。
一緒にいて穏やかな気持ちになるのも初めてで。

そんなキミと出逢えたことが何よりも嬉しい。


「何それ」

「何って……事実?」

「やっぱり変わり者だね」

「だーかーら!それは正輝だって!」


ワザとらしく両手を腰に当てて怒った様に唇を尖らせる。
正輝も私を軽く睨んでいたけれど。
同時に『プッ』と吹きだしたんだ。


「何やってんの私たち!?」

「知らない」


クスクスと笑い合って2人で床に座り込んだ。

授業をサボったり。
コソコソと探検したり。
先生から逃げ出したり。

たった1日でこんなに濃い思い出が出来るなんて思ってもいなかった。

正輝といると笑ってばかりだ。

一昨日までは、目を閉じて、耳を塞いで。
1人になりたがっていたのに。

その時の私からしたら、今の私は考えられなくて。

誰かとこんな風に笑い合えることが“幸せ”だって初めて知った。


「……正輝」

「ん?」


目を細めて私を見るキミ。
『ありがとう』なんて照れくさくて言えないけど。
それでもキミに何かを言いたくて。


「これからよろしくね」


そう言ってキミに手を差し出した。

一瞬だけ驚いた様に目を丸めていたけれど。
正輝はすぐに笑顔に戻って、私の手のひらに自分の手のひらを重ねた。


「こちらこそヨロシク」


2人で交わした握手。

正輝の手のひらからは優しさが伝わってくる様な不思議な気持ちになった。

これからもキミの隣で笑っていたい。
そんな小さな、でも、私にとっては大きな願望を想いながらニッと笑顔を浮かべた。