「馬鹿、置いてく訳ないでしょ」

「正輝……」

「一緒に行くよ」


別に先生に捕まっても、何かがあるって訳じゃない。
お説教が待っているくらいだろう。

でも、単純に嬉しかった。
正輝が一緒に行くって言ってくれて。

ぎゅっと手のひらに力を入れればキミも握り返してくれる。


「待ちなさい!!」


でも、このままじゃ捕まってしまう。
大声を張り上げる先生をチラリと見ていれば、何としてでも捕まえようと燃えている様に見えた。
私たちを追いかけるより、授業に専念してよ。
心で文句を言いながら正輝と一緒に走り続ける。


「このまま走っていても埒が明かない。
……隠れる所ない?」

「隠れる所……?」


考えていれば1つの場所が思い浮かんだ。
あそこなら……。
クルリと後ろを向けば少し距離が出来ていた。
これならイケるかも。
そう思った私は最後の力を振り絞って走るスピードを速めた。


「着いて来て!」

「あ、ああ」


さっきまで正輝が先導をしてくれていたけれど。
今度は私が頑張らなきゃ。


「正輝、次の角曲がったら直ぐに部屋に入るから」

「は?」

「行くよ!!」


突き当りを左に曲がって。
体についていた勢いをなんとか押さえながら扉を開け中に滑り込む。

静かに、素早く、扉を閉めて。
2人で掃除道具が入っているロッカーの隣の隙間に体を入れる。


「……扉を開けられたらOUTだよ」

「大丈夫」


私は自信があった。
先生はココの扉を絶対に開けようとはしない。
それ以前にココに隠れているとは思わないだろう。