「ずっとこうしていたい」

「……え?」

「アンタと2人でいつまでも」


キミはそう言って笑うと真っ直ぐに私の頬に手を伸ばした。
頬にかかっていた髪を優しく耳にかけてくれる。


「正輝……?」

「……ありがとね」


突然のお礼の言葉に目を丸めてしまう。
そんな事を言われる心当たりはなくて。
少し考えてみたけれど。
やっぱりよく分からなかった。


「俺アンタに逢えて本当によかった」


それは私の台詞だ。
そう思っていればキミは小さく笑う。


「アンタのお蔭で兄貴とも家族ともちゃんと向き合えた」


チラリと視線を向けるのは開きっぱなしの正輝のスクールバッグ。
その中には青色の布袋が入っていた。
それは正輝のお母さん特製のお弁当。
前まではキミはお弁当を見る度に哀しそうな顔をしていた。
だけど今はもうしない。

同情が詰まっていた豪華なお弁当は。
愛情が詰まった優しさいっぱいのお弁当へと変わった。

キミの家族が、本物の家族になった証。


「正輝が頑張ったからだよ」

「……違う、アンタのお蔭」


頑なに首を横に振る正輝にタメ息を吐きながら小さく呟いた。