「何で言わななかったの……?心の声の事」


その言葉に戸惑いつつも話したんだ。
化け物だと言われたくなかった。
気持ちが悪いと、嫌われたくなかった。
そう話せば、お父さんもお母さんも脱力したかの様に背もたれへと体を預けていた。


「あなただって本当の気持ちを隠していたじゃないっ」

「っ……」


その言葉に大きく目を見開いた。
そうだ。
私だって向き合おうとしなかった。
自分の気持ちを隠し続けてきた。


「自分の娘の事を嫌う訳ないじゃない……。
化け物なんて言う訳ないじゃないっ!!」


お母さんの叫びがガランとしたリビングに落された。
いやに響いたその声は胸の奥に刺さったんだ。
ガタンと立ち上がったお母さん。
椅子が倒れたのに、そんな事は気にせずに私の元へと駆け寄ると勢いよく抱き着いて来た。


「ごめんねっ……和葉っ。
気付いてあげられなくてっ……普通に産んであげられなくてごめんねっ……」


泣きながらお母さんは私を抱きしめ続けた。
耳元で聞こえるお母さんの泣き声に胸が苦しくなっていく。


「和葉」

「お父さん?」

「もう2度と言うな」

「え?」

「家族なんていらないなんて、哀しい事を言うんじゃない。
俺も、母さんも、間違っていた事は認める。
だけど……お前たちを要らない子だと思った事は1度もない。
お前たちは俺たちの宝なんだっ……」


私とお母さんの涙につられたのか、お父さんも泣いていた。
震えるその声に、小さく頷けば大きな手のひらで撫でられる。


「和翔だってそうよ!」

「……」

「あなたを自慢したいのは私たちの大切な子だから。
素敵なあなたを皆に知っていて欲しかったの。
要らないなんて考えた事も無い、大切な息子よ」

「ああ、少し厳しくし過ぎたかもしれない。
だけど、俺たちにとって、大切な事には変わらない」


お父さんはお兄ちゃんの隣に立つ。
そしてさっきの私と同じ様に頭を撫で回していた。