もう笑うしかなかった。


「心の中で言っているじゃない……」


そう言った瞬間に全てが崩れてなくなった様な気がした。
力なく笑って天井を見上げた。
この家は小さい頃から何ひとつ変わっていないのに。
私たちの心はいつから変わっていたのだろうか。


「ずっと聞いてきた。2人の心の声を。
お父さんの本音もお母さんの本音も。
思い出すだけで胸が苦しくなる。それくらい醜い言葉だった」


ポツリ、ポツリと小さく言葉を落としていく。
今までの事を思い出しながら。
幸せの家族の記憶なんて私にはないけれど。
それでも大切な家族だった。


「ねえ、家族って何……?」

「和葉……?」

「言いたい事を隠して、薄っぺらい建前だけを見せて。
作り笑いを浮かべて、心で文句を言うのが家族なの?」

「っ……」


お父さんとお母さんが同時に息を呑むのが分かった。
それでも止まらなかったのは私の想いが爆発したからだ。
元通りに綺麗にくっつけたいのに。
くっつけられないって、何処かで不安が渦巻いているから。
何とかしたい、そう思いながら足掻いているんだ。


「本当の家族がそういうものなら……。
私は家族なんていらないっ……お父さんも、お母さんもいらないっ。
もうバラバラになってもいいんだよ?
無理して一緒にいるくらいなら……家族なんて縛りを……なくしてしまえばいい」


肺の奥が痛かった。
もう呼吸すらも満足に出来なかった。
息苦しい胸を押さえながら。
ただ泣く事しか出来ない。


「……和葉……何で……」

「え……?」


お母さんの声は震えていた。
俯いていた顔を上げれば涙を流すお母さんが目に映った。