「まずは、私からお兄さんへお話します」

「は?俺?」

「はい」


迷いなく頷く私に、お兄さんとお兄ちゃんは目を丸めた。
だってそうだろう。
このメンバーならお兄さんに話すとしたら正輝のはずだ。
だけど、私たちの場合は違う。
だって2人で闘うって決めたんだから。

私は大きく息を吸い込んだ。

鼻を刺激する冷たい空気は肺にまで行き届く。
寒いはずなのに、胸の奥は熱くなっていた。

緊張、不安、恐れ。

その全部が私を支配するけれど。
その全部を力に変えてお兄さんにぶつかって行こう。


「お兄さんの馬鹿野郎ー!!」


突然と、大声で悪口を言う私。

お兄さんは勿論、お兄ちゃんも正輝も驚いていた。
まあ、正輝に至ってはその数秒後クスクスと笑い出していたけれど。

そんなキミの手をぎゅっと握って私はお兄さんを見つめた。

未だ呆然とするお兄さんにお構いなしに話し出す。


「正輝の事が憎い?嫌い?そんなの嘘でしょ?」

「う、嘘なんかじゃ……」

「だったら何で正輝と一緒にいるんですか!!」


ずっと抱え込んでいた疑問を面と向かってお兄さんにぶつける。


「憎いなら家を出て行けばいい、嫌いなら正輝の事を考えなければいい。
それなのに!あなたはずっと正輝の事を考えている。
それは……どうしてですか……?」


お願いだから、もう認めてください、気が付いてください。
自分の本当の気持ちに。


「それは……」


お兄さんは何かを言おうとした。
その顔は一瞬だけ哀しみに歪んだんだ。
息をするのも辛そうな、苦しそうな顔。
だけどすぐにそれは消えていく。


「嫌いだからに決まっているだろう?
いい人間のフリをして、味方のフリをして。
1番イイ所で突き放す。そうすれば立ち直れないくらいの絶望を味あわせることが出来る」


恍惚な表情を浮かべながらお兄さんは私を見ていた。
傍から見れば狂っている様なその顔。
だけど、違う。
その表情の中にも哀しみがあるんだって伝わってくるんだ。