「正輝クンは……ずっと君を想っていた」

「えっ……」

「君の事を話す時の彼は本当に幸せそうだった。
彼の病気の事も忘れさせてくれるくらい、医師と患者という立場を忘れてしまうくらい。
正輝クンは幸せそうにいつも和葉ちゃんの事を話していた」

「……」


先生は哀しそうに笑うと、私の肩からそっと手を離す。
そして、正輝の方を見ながら小さく笑ったんだ。


「多分、出逢った時から何かを感じていたのだろう。
『俺はきっと和葉を好きになると思う』そう言ってキミたちが出逢ったその日に。
……正輝クンは俺にそう言ったんだ」


先生は目を細めながら正輝を見ていた。
その笑顔は本当に優しくて正輝への想いが伝わってくるものだった。


「それで、そんなに時間が経ってないのに。
アイツは何の躊躇いもなく綺麗な瞳で『やっぱり好きになったよ』そう報告してくれた」


先生の顔が哀しみで歪むけれど。
それでも先生が泣く事はなかった。

正輝の為か、私の為か、自分の為か。

多分、全部が当たっていると思う。

必死に涙を堪える先生は、祈る様に手を重ねた。


「君の心の声の事を知った時も、あの子は力になりたいと。
和葉ちゃんの支えになりたいと必死だった」

「……っ……」


正輝はいつだってそうだった。

私の事を1番に考えて。
自分の事よりも私の苦しみに敏感で。
目を逸らしたくなるほど真っ直ぐだった。


「……正輝クンは君が思っている以上に和葉ちゃんの事が好きなんだ」

「……」

「でも、気持ちを伝えなかったのは……。
怖かったからだ……君を失う事が。
キミの傍にいられなくなる位なら、同士として傍にいたい、彼はいつもそう言っていた」


同士。

その言葉は私が正輝の事を表す時に使っていたモノだった。