嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

正輝は今ココで嘘をつこうとしているんだ。
自分が苦しむ事が分かった上で、最悪の場合、死んでしまうかもしれないのに。
キミはそれでも嘘をつこうとしているんだ。
皆に証明をする為に。


「正輝!そんな事したら……!!」

「大丈夫、ちゃんと否定するから」


正輝は嘘をついたら胸が苦しくなって倒れてしまう。
でも、それを自分の言葉で否定をすれば治るそうだ。
それは実際に私もこの目で何度か見ている。
だけど、正輝が苦しむと分かっているのに黙って見ている事なんて出来ない。


「駄目だよ!それでも辛い事に変わりはないんだから!!」

「……和葉……。
俺は大丈夫だから……見守っていてよ」


にっと笑うキミ。
さっきは正輝が見守っていてくれた。
私の好きな様にやらせてくれた。
本当は止めたかったくせに、私の意思を優先してくれた。
どっちも正輝の本当の気持ちで。
それでも私を信じて見守っていてくれたんだ。


「ずるいよ……」


そんな顔で言われたら口を出せる訳ないじゃない。
ぎゅっと唇を結んで俯いた。


「……ありがとう和葉」


優しい声は静かに消えていく。
すぐに低くて冷たい声が放たれた。


「よく見てなよ」


そう言ってキミはスゥッと息を吸い込んだ。

本当は見ていたくなかったけれど。
キミの想いを見届けたくて、ゆっくりと顔を上げる。
震える手のひらを握りしめて正輝を見つめた。


「俺は……嘘をついても死なない」


正輝の声が落されたその数秒後、私とクラスメートの悲鳴が響き渡った。