嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「許して貰わなくて結構」

「なに……?」


加藤くんの顔から一気に笑顔が消えたがそれに構う事なく彼の手を払い立ち上がる。
一瞬だけ体に痛みが走ったけれどなんともないみたいだ。
固まる加藤くんの横を通り過ぎて正輝の元へと駆け寄る。


「ばか、無理しすぎ」

「ははっ!ごめん!止めないでくれてありがとう」


にっと笑いかければキミは呆れた様に頷く。


「アンタ格好良かった」

「本当?正輝にそう言われると嬉しい!」


静まる教室の中で私たちの喋り声だけが響き渡っていた。


「白石……お前……よくも俺の優しさを踏みにじったな……」


怒り狂った目で私を睨みつける加藤くん。
なんか面倒な事になりそうだ、そう思っていれば彼はゆっくりと口を開いた。


「どうしてだ……山本は……カンニングをしたのに認めずにお前たちを巻き込んだ……。
一ノ瀬は、カンニングの件はまあいいとして、嘘をつくと死ぬなんてあり得ない事を言い出す嘘つきだ。
それなのに……何でお前は……そいつ等につくんだよ!?」


今にも掴みかかってきそうな彼を見ながら『んー』と首を傾げる。
どうして、と言われても……。
何て答えようか迷ったが、自分の想いをそのまま口に出す。


「山本くんは、確かにカンニングをしたけど、プレッシャーに苦しんできた。
それにちゃんと認めたんだから、もう苦しむ必要なんてない。
正輝は……」


チラリと彼の目を見てすぐに加藤くんへと視線を戻す。


「正輝は嘘なんてつかないから」

「……は?お前馬鹿か?嘘をついたくらいで死ぬわけ……」


加藤くんの言葉を遮る様に私は言葉を被せる。


「正輝は嘘なんてつかない!
それ以上、彼を侮辱すると許さないから」


ギリッと歯を食いしばりながら加藤くんを睨む。