嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「(俺だって……誰かを苛めたい訳じゃない……)」

「(山本は親友だし傷つけたくない……)」

「(でも、加藤に逆らうと俺たちが……)」


皆の心の声が頭の中に届く。
沢山の感情が響いて来るけれど、皆の心の中には加藤くん……このクラスのリーダーが存在している。
皆は彼を恐れているんだ。
だから自分に素直になれない。
怒りで震える唇をぎゅっと結んで加藤くんを見た。


「なんだよ」


少し乱暴者の加藤くん。
運動神経も良くて、喧嘩も強くて、容姿だっていいから。
皆は彼の言いなりだった。
だけど、彼は人の上に立つ資格なんて無い。
誰かの痛みが分からない人間にリーダーなんて務まらない。


「寂しい人」


ポツリと出た言葉に皆は目を丸めた。
加藤くんに至っては怒りを露わにしていたけれど。
私は構わずに話し続けた。


「あなたは本当は孤独な人。
力や圧力でしか人を繋ぎ止めていけない。
それを自分の人望だと勘違いしている哀しい人」

「何だと!?」


勢いよく私に掴みかかてくる加藤くん。
正輝はすぐに引き離そうとしてくれたけど、ゆっくりと首を横に振ってそれを制した。
恐くない訳ではない。
本当は今にでも崩れ落ちてしまいそうなくらいだ。
だけど。
ザワつく教室の中で私は1人笑顔を浮かべた。


「本当の事でしょ?
だって……誰1人……あなたの事なんて好きじゃないんだから」


言い切った瞬間、突き飛ばされた。
ガタンと音を立てながら私の体は机に突っ込んでいく。

更に騒がしくなる教室。
正輝に至っては怒りで狂いそうになっていた。
でも、小さく首を振ればキミは拳を握りしめながらその場に立ち止まる。
本当にイイ人だ。
私の想いを尊重してくれるなんて。

痛みで顔は歪むけれど加藤くんを見る事はやめなかった。


「ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」

「ふざけた事……?笑わせるわね。
皆が本当にあなたの事が好きなら、失礼な事を言う私に食って掛るはずよ。
……あなたを守る為にね?」

「っ……」


加藤くんは眉を顰めて私を睨みつけた。
周りの皆もハッとした様に言葉を失くしていた。

そう。
誰1人、口を挟もうともせずに私たちのやり取りを見ていた。

正輝は私が危険な目に合うと必ず助けようとしてくれているけれど。
加藤くんの味方は誰も動こうとしないんだ。