嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「山本……お前さ……カンニングはしてないって……。
俺たちに嘘をついてたって事だよな?
一ノ瀬や白石が俺らに囲まれてる時も、お前は知らん顔をしてた。
……結局、1番悪いのはテメェじゃねぇか」


さっきまで、山本くんの味方をしていたクラスメートは。
リーダー格の男のたったひと言で敵へと回って行った。


「(今度は山本がターゲットだ!)」

「(アイツに逆らうと俺がターゲットになるからな……山本には悪いけど裏切るまでだ)」


沢山の醜い声。
人間の本音。

もう聞き飽きた。

そんな事はとっくに知っている。

だけど、胸が苦しくならない訳がない。


「っ……」


目を閉じて、耳を塞いで。
この世界と自分を切り離そうとするけれど。


「(山本をやれ!)」

「(嘘つきは山本だ!)」


それは何の意味もない。

頭に入ってくる声に耐えきれず、私の体は大きく傾いた。


「和葉」


それでも倒れなくて済んだのはキミが支えてくれたから。


「正輝……」

「大丈夫、俺がついてるよ」


背中から感じる温もりも、キミの優しい声も。
私を勇気づけてくれる。
醜い心の声なんかに負けないくらい、大きく広がっていく。
落ち着いた私は正輝にコクリと頷くと目を瞑った。
深く息を吸い込んでパッと目を見開く。


「煩い煩い……うるさい!!」


教室中に響き渡る私の声。
皆の間でこんなに声を張り上げたのは初めてかもしれない。