嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「一ノ瀬の言う通り……俺はカンニングをした」


小さく呟かれたその言葉に一瞬にしてクラスが静まり返った。
でも、すぐにヒソヒソと話し声が聞こえてくる。


「カンニングしたんだって」

「じゃあ一ノ瀬は嘘をついてなかったって事か?」

「どうなってんだ?」


そんな声が飛び交う中で、山本くんは口を開き続けた。


「俺は……テストでいつも学年10位以内には入っていた。
でも、カンニング事件の1つ前のテストで俺は12位に落ちた。
それで親も教師も、頑張れ頑張れって……。
俺だって必死に頑張ってる!なのにそんな気持ちも知らないで……」


震えた山本くんの声。
何処にでもありそうな至って普通の理由。
それでも、彼が苦しんできた事に変わりはない。


「山本くん……今まで辛かったね……。
プレッシャーってさ思っている以上に胸にクるよね」


決して同情なんかじゃない。
だって私にもその気持ちは少し分かるから。
沢山の感情が溢れ出てきたけれど。
唇を引き締めて、小さく笑う。


「でも、あなたはよく頑張った。
カンニングは駄目だけど……。
ちゃんと真実を口に出した。
だから、私は凄く格好良いと思うよ」

「白石っ……」


泣きそうな山本くんの声。
何故か私まで泣きそうになってしまうけど、必死に堪えて笑顔を作るんだ。


「和葉」

「……正輝……」


ポンポンと頭を撫でられると心が軽くなる。
キミの優しさが胸に伝わって何度も何度も頷いた。

そんな優しい雰囲気を壊す様に低い声が落とされる。


「ってかさー何イイ雰囲気で終わらせようとしてる訳??」


クラスのリーダー的な存在の男子が眉を顰めながら私と正輝、山本くんを見た。