「それと」


いきなり消えた温もり。

さっきまで私を抱きしめていたキミは少し体を離していた。


「正輝?」


首を傾げれば、正輝の顔から一気に笑顔が消える。


「もう2度と俺に隠し事しない事。
辛いなら辛いって言って、苦しいなら苦しいって言って。
泣きたい時は俺の胸で泣いて」

「えっ……」

「アンタが1人で抱え込んでいる所、もう見たくない。
俺の為に吐いた嘘でも、もう聞きたくない」

「正輝……」


キミの言葉が胸に刺さった。

正輝を守りたい、その自己満足の為に。

私はキミに沢山の嘘をついた。

その度に傷つくキミの顔を見てきた。

だからもう2度とあんな顔を見たくない。
正輝にあんな想いをさせたくない。


「誰が嘘をついても興味ないけど。
アンタがつく嘘は胸が痛いんだ」

「……ん……もう吐かないから……」

「本当に?」

「……うん……」


頷いた瞬間にキミの目はゆっくりと細まった。

嬉しそうなその顔に私の顔にも笑顔が浮かぶ。