それでもこの世界を捨てきれないのは。
キミがココにいるからだ。
私の隣で、いつも笑ってくれるからだ。

正輝と過ごしてきた時間は人生の中では短いけれど。
私にとっては1番の宝物だ。

そんな宝物を、醜い世界に残して、消えるなんて出来ない。

少しでも長く、大切にしたい。
こんな世界でもキミとなら光り輝いて見えるから。


「……これからもっ……生きて……2人で……思い出を作りたいから……。
大嫌いな世界に負けないくらい……ううん……。
それよりもっと大好きなキミと、楽しい思い出を作りたいっ……!!」


キミの腕を掴んで、震える唇で、今の私の全ての想いをぶつけた。

泣き過ぎて、酷いであろう顔をあげて正輝を見つめる。

交じり合った視線。

キミはフッと頬を緩めて私を見降ろした。

正輝の大きな手のひらが私の頬を包み込んだ。


「酷い顔」

「はぁ!?」


クスクスと笑うキミに思わず絶叫を上げてしまう。
さっきまで泣いていた事なんてすっかりと忘れてしまうくらいに。

怒る私を見ても、ずっと笑い続けるキミ。
でも、その手のひらは優しく私の頬を撫で下ろす。


「一緒に作ろうね」

「え?」


突然の言葉に首を傾げれば、急に正輝の顔が近付いてくる。
コツンとオデコとオデコがぶつかった。


「俺も大好きなアンタと、楽しい思い出を作りたい」


悩殺をされるんじゃないかって思うくらいの笑顔。
そんな笑顔を見て、一気に顔が熱くなっていく。


「どうしたの?」


私の気持ちなんて知らない正輝は呑気に首を傾げている。
それがムカついて、ベーッと舌を突き出した。


「何その可愛い顔」

「は、はあ!?」

「もう……アンタは何をしてても可愛すぎっ」


タメ息交じりに言うキミに更に熱くなる私の頬。


「さ、さっきは酷い顔って……」

「うん、まあ酷い顔は本当なんだけどね」

「うっ……」


本当の事だし、言い返す気力もない。
でも悔しくてキミを恨めしく睨んでいれば、目の前で正輝は笑うんだ。


「でも、それ以上に凄く愛おしい」

「っ……」


ドクンと胸が高鳴った。

騒ぎ立てる心臓を隠す様にキミの胸板に顔を押し付けたんだ。