「っ……」


キミと一緒に砂浜へ足を付けた瞬間に私の体は崩れ落ちた。

死への恐怖からか。
生きていた事の安堵からか。

自分ではよく分からないけれど。

立っていられないほど、私の体は限界だったみたいだ。


「和葉、大丈夫。
……大丈夫だから……」


正輝は座り込む私の体を優しく包み込むと力強く抱きしめてくれる。
耳元で囁かれるキミの言葉が温かくて、無性に泣けてくるんだ。


「うっ……」


堪え切れず小さく漏れた声。
押し殺そうとしたけれど、すぐにその考えは頭から消えていく。


「我慢しなくていいから」


ポンポンと背中を叩かれて。
しっかりと抱きしめてくれる。

まるで泣き場所を作ってくれるみたいに。
キミは私を自分の腕の中に閉じ込めたんだ。

そんな事をされたら、もう止まる訳がなかった。

子供みたいに声を上げながら。
自分の感情を爆発させたんだ。


「私っ……」

「……うん」

「本気で……死にたかった……」

「……うん」


キミに抱き着きながら今、胸にある想いを全て曝け出す。

何を話して、何を隠す、とか。
今の私にはそんな判断も出来なくて。

ただ自分の気持ちを正輝にぶつけたんだ。


「こんな世界……大嫌いでっ……。
早く……消えてしまいたいのにっ……」

「……うん」

「キミとの思い出が……私をココに引き止めるのっ……」

「……和葉……?」

「キミと過ごした時間は何よりも大切だからっ……!
醜い世界でも……それは本物だからっ……」


私にはもう何もないって思ってた。

幸せな家族なんて形だけで。
友達なんて口先だけで。
唯一信じていたお兄ちゃんも私を見ていなくて。

もう、全部が消えてなくなったと思っていた。