嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「待ってよ……正輝まで死ななくたって……」

「うるさい」


キミはそれだけ言って立ち上がった。
そして、真っ直ぐと海の先を見つめている。
私もつられて同じ様にキミの隣で肩を並べながら視線を海へと移す。

波の音と風の音。

2つが交じり合う中にキミの声が落とされた。


「覚えてる?」

「……何を?」

「俺たちが初めて逢った時の事」


その時の事を思い出しているのか正輝の声はいつもよりも優しかった。
私も目を閉じてキミと逢った時の事を思い出す。
この海で正輝と出逢った時の事を。


「もちろん、覚えてるよ」


絞り出す様に声を出す。

何の因果だろう。
初めて出逢った時も、今も。

私はこの海の中に入っていた。

あの時は自殺なんて考えていなかったけど。
今日は本気でこの世を去ろうとした。
キミがいなかったら私は今頃、この世にはいないだろう。

そう思うと不思議な感じがする。

自分がココに立っている事が。
キミとこうやって話している事が。


「和葉」

「ん?」

「……あの時、俺はアンタが自殺をするって勘違いして止めたよね」

「うん……本当に驚いたよ。
別に死ぬつもりなんてなかったのにさ!」


クスクスと笑えばキミも小さく笑う。
だけど、少し様子がおかしかったんだ。


「……」

「……正輝?」


気になって隣を見ればキミの顔が目に映る。
でも、ハッと息を呑んだだけで何も話し掛ける事が出来なかった。