「アイツにはもっと、もっと苦しんでもらう。
今までみたいな温いやり方じゃなくて心も体もボロボロに引き裂いてやる!!」


狂った様に笑うお兄さん。
それを呆然と見る私。

どうして人生は上手くいかないのだろう。
彼を見ながらそんな事を思っていた。

お兄さんは愛されたかっただけなのに。
必要とされたかっただけなのに。

本当は家族が大切で、大好きなはずなのに。

だってそうじゃなかったら。
とっくにあの家を出ているはずでしょう?

社会人だし、お金に不自由はしていないと思う。

なのにワザワザ嫌いな人間がいる空間に留まるのは。
一緒にいたいからだ。

いつか、両親が自分を愛してくれる。
いつか、正輝と分かり合える日が来る。
いつか、本物の家族になれる。

そのいつかを期待して。
あなたはあの家に今も住んでいるんじゃないですか?

本当は誰よりも家族を愛しているんだ。


「……お兄さん……」

「君にはまだ利用価値がある。
だから今は壊さない。
正輝を傷付ける為に君にも働いてもらうから」


怪しげな顔で笑うとお兄さんは立ち上がった。
そして、振り向く事なく早足で立ち去っていく。
その後ろ姿は、凄く小さく見えたんだ。


「……皆が幸せになる……。
その方法はないのかな……」


ポツリと呟いた言葉は誰もいない公園に静かに消えていったんだ。