「正輝……大丈夫だよ。
キミには綺麗な部分だけを見ていて欲しい。
それ以外は私が全部、受け止めるから……」


意味が分からない私の言葉。
クラスメートは皆騒ぎ出していて。
誰が誰の声なんか全く分からなくなっていた。
それでもキミの声だけはしっかりと耳に届くんだ。


「アンタ……まさか……」


何かに気が付いた様にキミは声を上げた。
でもすぐにそれは聞こえなくなる。

私が逃げ出したからだ。
我慢が出来なくなって走り出した。

正輝の声が聞こえない所に行きたかったんだ。

キミの声を聞くと決心が鈍るから。

一緒にいたいと言う想いが溢れ出て甘えてしまうから。
そうしてしまったら。
いつかキミを傷付ける事になる。
キミにとって1番大切なお兄さんを失う事になる位なら。
私が消えた方がいいんだ。
その方がキミはまた前に進めると思うから。

風を切りながら走り続ける。

転がり落ちる様に階段を駆け下りて。

外へと向かう。

行先は決めてあった。

全部、私がケリを付けるから。

最後の5段を思い切り蹴り飛ばして宙へと舞った。

軽く足に衝撃が走るけれど。
それでも構わずに走り続けた。