嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

気が付いたら全ての授業が終わっていた。
どうやって過ごしたのかとか、全く思い出せないほど。


「和葉、帰ろう」

「……」


呆然としていれば上から声が降ってきた。
顔を見なくても分かる。
それがキミの声だって事くらい。

だけど、私はそれに反応をせずに鞄を掴み立ち上がる。


「おっ!?痴話喧嘩か?」

「白石もやっと俺たちにつく気になったのか!?」


わぁー、と勝手に盛り上がる教室。
そんな中でキミだけが黙り込んでいた。
多分、奥歯を噛みしめて、辛そうな顔をしていると思う。
そんなキミの顔は見たくない。
なのに。


「和葉」


パシリと私の手を掴むキミ。

何も変わらない大きな手。
その温もりを感じていたいのに。
大袈裟なくらいに振り払ってしまった。


「かずは……?」


戸惑った様なキミの声が耳に届く。
その声を聞いた瞬間に後悔をした。
今すぐに謝ってしまいたい。
キミの手を掴みなおしたい。
そんな想いが一気に溢れ出てくるけれど。
それは出来なかった。
どんな形であれ、キミを守りたい。
そう思ったから。
それが間違った答えだとしても。
私は自分の自己満足の為にキミを守る道を選ぶんだ。


「もう……私に関わらないで……」

「えっ……」


そう言った瞬間に教室中が盛り上がった。
ハイタッチをして喜ぶ人。
口笛を吹く人。
声高らかに笑っている人。
全てが耳障りで今すぐにでもこの場から去りたいけれど。
キミの辛そうな声が私の心を離してくれないんだ。


「言ったよね……?
嘘をついているかくらい分かるって」


キミには何もかもがお見通しな気がした。
それでも私は止まる訳にはいかないんだ。